マリコラム

2012年07月13日(金)

ルポ: 福祉の世界最先端の町

お母さん、日本は「安心して老いていける国」に向かってますか?

 

 

今から150年ほど前、オーストラリアは建国前の植民地時代。

そんな時代になんと! 世界で一番リッチな町がこの国に存在した。 それもすぐメルボルンの近くに……。

それは、当時巨大な金塊が発見され、ゴールド・ラッシュに沸いたバララットだった。

世界中から一攫千金を夢見たものたちが集まってきた。

彼らの宿泊場、酒場、娯楽場等々と、採掘現場の周りにはものすごい勢いで町が建設されていった。

ところが実際に金を掘り出した「成金」は当然限られている。 遠方から体ひとつでやってきて、過酷な労働環境で目や肺をやられ、食べ物もなく、野垂れ死にする労働者も増えていった。 言葉も通じない外国人もいる。

バララットの人たちは彼らを見殺しにできないと、ボランティアでまず給食サービスをはじめた。 そのうちベッドを、そして医療を提供しはじめた。

 

――現在、世界でも有名な総合医療福祉施設、クイーン・エリザベス・センターがバララットにあるのも、これでうなずける。

 

日本でもここ数年、福祉福祉と騒がれるようになってきたけど、ここはすでに100年以上の歴史ある福祉施設。 最新の医療福祉システムを備えていて、欧米や日本からも研究者や福祉関係者たちが絶えず見学に来ている。 日本でも朝日新聞の社説に連載で紹介されたという。

 

そんな世界最高水準をいく福祉施設センターで、忙しく働いている日本人看護婦がいる。 洋子・マーフィーさん。 学生として30年前、オーストラリアにやってきて、ここで看護婦の免許を取った。

洋子さんのいるおかげもあってか、日本からの訪問者はもう4000人を超えたそうだ。 ここを見学した後、「老後はオーストラリアに住みたい」と真剣に考え始める人が多いという。 日本人の有志が贈呈したという、中庭の日本石庭には驚いた。 洋子さんに言わせると「日本の福祉施設は30年遅れている」らしい。

 

もちろん医療施設や器械なら輸入すればすぐ追いつくけど、問題はハードではなくむしろソフトの問題らしい。

このセンターの一番のポリシーは、患者が自宅にいるときとまったく同じ状態でくつろげること。 だから、4階建てのビルが昨年2階建てに作り直された。 4階建ての家なんてあんまりないし、できるだけ庭と平行に生活してほしいという願いからだ。 そして家族友人の面会もなんとペットも含めて、24時間オープンにしているという。 たしかに自宅だと制限なんてあるわけない。

 

病院のベッドは温かみのある木製で、カーテンもカーペットも暖色系の明るい色。 患者にはできるだけ家から自分の好きな写真や絵とか持ってきて部屋に飾るように薦めている。

 

館内を歩いていても、病院とか医療施設のイメージがまったくしない。 薬のにおいも、あの独特なアンモニアのにおいもなし。 カーペットに特殊加工がしてあるらしい。 むしろ、してきたのは焼きたてのアーモンドケーキの匂い。 実はこれもアロマセラピーの一種で、わざわざセラピストがケーキを焼いて、家庭的な匂いで老人たちの嗅覚に「ここはあなたのおうちですよ」と呼びかけてるのだ。

 

世界最先端、のイメージはまるで宇宙開発センターのようなギラギラしたものだったけど、 ここは医療施設のイメージをくつがえす、「世界最先端」だった。 心や体が弱っている人に必要な家庭的な温かさにあふれている。 患者としてではなく、住人としてスタッフが温かく接している。 しかも最後にとびきり驚いたのは、すべて政府負担でほとんどが無料で受けられるサービスだということ。

 

感動して帰路につくまえに、せっかくバララットに来たんだし、バララット名物、ゴールドラッシュ時代を再現するテーマパーク、ソブリンヒルにも行ってみる。 採掘場の小川で金をすくってみた。 シルクハットのお兄さんが必死で助けてくれて、やっとアリのアカほどの金をゲット。

 

確かに、バララットの金脈はこんなにも細くなってしまったけど、そこから生まれた、人々のボランティア精神、福祉の精神の金脈はこれからもずっとずっと絶えることなく、この町を豊かにしていくのだろう。

 

 

下からマリコ解説:今回はちょっと変り種で、レポート記事です。 何度も言いますが、これも10年前の内容なので、さっそく現在のクイーン・エリザベス・センターのウェブを調べたところ、3つのセンターが統合して更に大きな医療機関、バララット・ヘルス・サービスに成長してしていました。 さて、そして我が母国日本の福祉は、その後10年どう進化したでしょう。 これはみなさんに聞くしかありません。 工夫、サービスの得意な日本だから、ここに書いてあることくらいはすでに、当然のことかもしれませんね。

誰もが安心して老いることができる国、それが私たちの共通の願いです。


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投稿日時:2012年07月13日(金)3:46 PM

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