まず深呼吸してから、ゆっくりキーボードに手を置く。

まるでグランドピアノで演奏を始めるみたいに。

そしていっきに書き出す。

そう、いっきに書いてしまおう。

 

 

 

宗教の違いで、人々が戦ってる。

殺されてる。 改宗しないと殺すと脅してる。

命を狙って得た信仰心をどうするというのだろう。

俺を愛せ、愛さないと殺す！と、

自分の家族を殺した相手にナイフを突きつけられて、

わかりました、愛しますと言えるだろうか。

万一、愛を誓ったとしても、

そんな状況下で得た愛を信じられるだろうか。

 

信仰心も愛も買えない。脅して得ることはできない。人の心は強要できない。

外から変えるのではなく、内から生まれる、感じるものだから。

そんなことがわからないのだろうか。

 

じゃあいっそのこと、違う考えの人を、

自分を愛してくれない人を、 殺してしまえばいいのか。

そこから生まれる憎しみは生涯消えない。

愛や信仰心などとは、ほど遠い感情が生まれる。

そして次の世代へと引き継がれる。

 

自分と同じ考えの者だけを残し、残りの世界を全滅させれば、

彼らの信じる平和がやってくるのか。

その平和のために、幾つの命が犠牲になるのか。

彼らの信じる神の教えはよくわからない。

でも、仮にも宗教の名を持つ教えなら、

命の尊さを広めるものではないのか。

そのために、人の命を簡単に奪っていいはずがない。

それを許す教えなら、本末転倒のきわみだ。

 

 

先進国に生まれれば、 宗教はセキュリテイだったり、

社会的なステータス、身の拠り所であるかもしれない。

なくても特に支障はないと考える人も多い。

 

貧困、戦乱の国に生まれれば、 それは生きるすべてとなる。

それしか頼れるものがない。追い詰められている。

神によってのみ、生かされているこの命。

その神のために命を賭けることこそが人生の目的。

周りの大人たちは、みなそうやって生きてきた。

おそらくそれしか、見本がなかった。

自分が周囲から認められるには、 英雄になるのは、

それしかないと信じている。

自分の生まれた意味を、存在の意義を、

そうやってしか証明できない人生。

生きてる世界が悲惨過ぎて、

そこにしか、生きてる興奮が見出せないのか。

 

彼らは、きっと知らない。

 

初デートで相手を待つ胸の高鳴りを、

スポーツの興奮を、芸術の奥深さを、

ドラマやアニメの面白さ、映画や音楽の感動を、

何かを真剣に必死に勉強して会得した達成感を、

そして、夢を描き追いかけることを。

 

万が一、夢があったとしても、 それは早くに摘まれてしまった。

自分だけの夢をみることなんて、 夢のまた夢。

いや、それは悪だ。

そんな余裕も時間も想像力もない。

すべては神のために。

 

夢を見ることを許されない、 いや、知らない世界に住む若者たちが

自分の命を輝かせて散ろうと、 英雄になろうと、 武器を手にする。

 

たとえ恵まれた国に生まれても、

夢を摘まれ、希望を失い、 自ら戦場に向かう若者だっている。

彼らを愚かだ、負け犬だと、 非難して済む次元ではなくなっている。

いまの世界を見れば。

 

 

今日生まれた赤ちゃんが、

いま学校に通う子供たちが、

明日試験会場へ向かう受験生が、

今年成人を迎えた若者たちが、

みんなそれぞれの夢を描いて、

それを自由に目指して生きていけることが どんなに幸せなことか、

今ほど痛切に感じることはない。

 

自分が何をしたい、何を知りたい、

何になりたい、どこに住みたい、どこで働きたい、

そんな彼らの夢を摘むことは、

この世から平和の芽を摘むことと同じ。

 

子供たちが、若者たちが、 夢をもって生きている人たちすべてが、

自由に夢を追いかけられる世界。

それこそが平和の原点なら、

それを支えて、育んでいくことが、

いまの私たちにできる、

小さいけど、確実な 平和への一歩に違いない。

 

私たちの周りに もっともっと夢を育てていこう。

たくさんの平和の種を植えていこう。

水をあげよう、光をあげよう。

きっといつか花は咲く。