2012年09月07日(金)
コラムミニ: 寿司職人、ロンドンの霧に泣く
霧の深いロンドンの夜でした。
地下鉄で、私の背中にもたれかかるようにして、ドアの閉まる瞬間に入ってきた日本人男性がいました。
明らかに泥酔状態で、そばを離れようとしません。
自分の服やカバンは高いブランド品だ、とか今日はイギリス人たちと飲んでて日本人は自分だけだった、とか酒の臭いをプンプンさせて自慢げに大声で話してきます。
駅に着いたら、その酔っぱらいも降りて来たので、早足で歩き出すと、なんとそのうち道端に倒れてしまいました。
ロンドンの冬は厳しく、凍死する可能性もだってあります。仕方なく彼をゆり起こして、住所を聞きましたが、まともに会話もできない状態で、タクシーからは乗車拒否され、バスでさえダメでした。
チケットを買うために、「高級なカバン」の中を捜しましたが、財布が見つかりません。
財布だけじゃなく、時計をはじめ貴重品すべて失って、そのカバンの中味は空っぽ、 彼は一文無しの状態でした。
おそらく一緒に飲んでた仲間でしょうが、連絡先も知らないと言ってます。
ようやく事態が見えてきた彼は、ロンドンの凍てつく冬の空に向かって、放心状態で声をあげて泣き始めました。
普段はロンドンの中心部で寿司を握る真面目な板前さんだそうです。
高い衣服を身につけ、あまり知らない人たちと自分を失うほど酔っぱらう……私まで頭痛がしてきました。
海外に一人でいることが、すごいんでしょうか。
そうじゃないですよね。
誰といても、どこにいても、自分自身を失わないこと。
それが海外生活の第一歩です。
下からマリコラム解説:ロンドンにいた頃は、私も海外生活初心者でしたから、滞在歴の長い日本人に会うと、それだけでどこか尊敬と羨望の眼差しで見てたかもしれません。 それからあっという間に14年近く自分も海外にいるわけで、いましみじみ思うのは、場所や環境じゃないなってこと。
本当に尊敬すべきは、自分のいる場所で、生き生きと頑張ってる人、どんな環境にいても、自分らしさを発揮して輝いてる人。 そういう人は場所を選びません。 自分のいる場所が一番って思える人は幸せです!
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